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訪れるお客様を
玄界灘の白波で
お出迎え。
波型の面格子は
今も健在。

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メインエントランス(正面玄関)は北側を向き、玄界灘と対峙する。入口の面格子は玄界灘の荒波を連想させる尾形光琳の波模様を、アルミ鋳物で表現した田島順三製作所によるもの。福岡への旅情をさりげなく感じさせる心憎い演出である。入口柱は花咋鳥(はなくいどり)のレリーフがあしらわれている。花と鳥は全館のモチーフとなっており、波模様と同様、機能を重視する現代建築に取り込まれた自然のディテールは、各所に散りばめられ見ごたえがある。
 <第2章−3>

時を忘れてしまう
エッグチェアと錦織一対。

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3839left 西鉄グランドホテルのメインロビーはビジネスマンの打ち合わせや、デートの待ち合わせなどに人気があった。そこには、今は無いサーリネンの設計による有名な本レザー張りのエッグチェアがあった。腰を沈めると外界から隔絶された自分だけの空間という趣さえ感じさせる心地よさ。つい眠りに誘われてしまう人も多かったに違いない。ロビーには珍しい床の間もあり、京都国立博物館の六双屏風からとった舞妓の錦織一対がかけられていた。それは単調な色調のフロアに艶やかさを放っていた。この錦織、今では同じものを織る技術者がいないという。現在では東側入り口そばのロビーに移設され、見ることができる。
<第2章−4>

水の飛沫に
小さな虹がかかる・・・
ラウンジのくつろぎの時。

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ロビーとラウンジから臨む庭には70mの人工の滝がある。後方に楓、杉、樟、孟宗竹を植えて借景とし、中の島には松、しだれ桜、しだれ梅を配して四季の移ろいを感じさせる。
滝に積み重ねられた石は山口産の松陰石。流れる滝が砕ける散るその細かい飛沫が美しい。そのラウンジの手前にあったメインバーグロット(美しい洞窟)は木をふんだんに使ったしっとりと落ち着いたバーであった。家具に至るまですべてに欅材を使うという徹底ぶり、どっしりとしたバーカウンターは長さ7m、たかさ1,19mの欅集成材。現在はラウンジにしつらえられたバーに移設され、その歴史を刻み続けている。
また、ロビーとラウンジをつなぐ場所に、ライティングデスクと隣り合わせにして愛の泉があり、陽光が差し込むと泉の底の大理石モザイク画(大魚の図)が浮かび上がっていた。

文:清水要(K’sクリエイティブエージェンシー)